中央アルプス縦走 |
(ロープウェイ駅〜濁沢岳〜桧尾岳〜東川岳〜木曽殿山荘(泊) 〜空木岳〜池山小屋〜登山口〜駐車場) |
●場 所 | 長野県木曽郡 | |||
●標高 | 濁沢大峰2724m 熊沢岳2778m 桧尾岳2687m 東川岳2671m 空木岳2864m |
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●山行日 | 1992年9月12日(土)〜9月13日(日) | |||
●多治見から 登山口まで |
多治見=中央道=菅の台バス⇔ロープウェイで千畳敷へ(登山口) ※ー鉄道 =自動車 ・・・徒歩 ⇒バス ⇔その他 |
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●参加者 | 戸嶋、林、丹羽 | |||
●コースタイム | 1日目 9月12日(土)
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2日目 9月13日(日)
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多治見ICまで多治見の会員に送ってもらい、名古屋からの車に乗り込んだ。 中央道を快適に走り、菅の台に7:20着。 先週より車が多い。 先週の教訓を活かし、荷物を並ばせてから切符を買ったり、トイレへ行ったりする。 定時の7:42に乗車。早く並んだおかげで座ることができた。 ロープウェイも、整理券を出すほどには混んでいず、階段下の辺りが最後尾。 ロープウェイの中から、一列になって極楽平へ登っていく登山者の姿が見える。 千畳敷に、8:55着。9:10発。
先週、長く感じた極楽平までの登りも25分で、予定より10分も早い。 半袖と長袖の2枚を着ているので暑くて仕方がない。 が、稜線に出るとこれでちょうどいいくらい。 夏の頃お花畑だった所は、今はオトコヨモギだけが大きな顔をしてのさばっている。 稜線からは遠くに、甲斐駒・仙丈・北岳・間ノ岳と懐かしい山の連なりが 雲海の上に頭を出し、 近くには御嶽・三の沢・宝剣・:木曽駒・乗鞍・恵那山などが見える。 極楽平で5分ほど休み、いよいよ空木へと歩き始める。 最初はルンルンの尾根歩き。
コマウスユキソウのいびつな花があちこちに。 それとトウヤクリンドウの上を向いた花がロープの向こう側のあちこちに見られる。 どこからか人の声?? ずっと向こうの山並みに小さく小さく1列になった10数人の人影。 もしかして同じ山小屋かも? 若者ならテントだろうけれど・・・と、いろいろ想像してみる。 ウラシマツツジが紅葉を初めており、チョウノスケソウの羽毛の付いた種も所々に見える。 チョウノスケソウ チングルマの種にそっくりだが、 こちらの方がチングルマより背が低く、種の羽毛の風車も小型で白っぽい。
前にそびえる山へ行くまでには、いったん降りてから登り返さなければならない。 どこまで降りるのかと鞍部を見下ろす所まで来ると、ウワア〜とため息が出る。 鞍部の底には、先程の1団体が休憩をしている。 ごろごろざらざらの急坂を膝でこらえながら下りていくと・・・中高年であった。 追い越してからはまた登りになった。 頂上直下からは、岩・岩・岩。 大きな岩が並んでいる濁沢大峰2724m頂上に、9:35着。 立ったままで休憩。三の沢岳が間近に見える。 はるか遠くに変わった形の岩が二つ並んでいる山頂が見える。 「あれが桧尾岳」「ええ〜っ、あんな所まで!」 後で分かったが二つの岩の山は、熊沢岳。桧尾岳はもっと近かった。 空木はそのまた向こうのずっと先。 正面に見えるのだが、ぐるっと回り込んで行かなければならない。 先は長い。10分ほどの休憩後に出発。
鎖・アングル(鉄の杭)・ロープなどのある岩場を急降下する。 女性メンバーは、膝もだが、ふくらはぎが攣りそうとかでいつものペースより遅い。 登りならそれほどでもないところが、下りとなると足場が見にくくて、 次どこへ足をかけようかの判断がなかなかつかなくて手間取ってしまう。 鞍部まで下りたらまた登りに入る。 後ろに宝剣・御嶽・三の沢岳を振り返りながらゆっくりゆっくり登る。 「50分たったよ〜」「もっと見晴らしのいい所まで〜」と、リーダーの声。 1時間たったが上に出れない。 「休もうよ〜」やっとOKが出た。(あと、10分登れば桧尾岳の頂上だった) 千畳敷の方からガスがどんどん湧いてきて、山肌を這いあがっていくが、 尾根まで来るともう這い上がる山が無くなって、そのまま空に登って行ってしまい、 尾根の反対側のくっきりはっきりの透明度の高い景色と正反対の景色になっている。 15分の休憩の後、またまた登り始めると三叉路の標識が見えた。 「あれが桧尾よ」あっけない頂上だった。2727m。 少し下のガスの中に避難小屋が見える。 下からは長方形に見えた小屋も上から見るとかまぼこ型。 5分休憩で出発。
下って登って、下って登ってと岩場を何回登り返しただろう。 垂直な岩場のアングルに手をかけグイッと体を持ち上げたり、 岩の少しのでっぱりに足をかけ、もう片方の足を思いっきり上げて ぐぐぐ〜っと腕力で持ち上げたり、岩に抱きついて横へ移動したりと はらはらドキドキ、スリル満点の岩場だった。 あの二つ岩がもう目の前になってきた。 ところがまたまた一度下ってからでないと頂上に着かないのだが、 ここまで来ればぐんぐん高度を稼ぐ岩場に一種の快感を覚えてしまうほど。
2778mの熊沢岳に13:25着。 大きくて上が平らな岩はもう占領されているので、頂上標識のある所で休憩。 ここから2時間で木曽殿越。到着予定は、休憩を取って18:00頃かと見当をつけた。 (実際はもっと早く15:20に到着) ここからは小ピーク4つで東川岳。 そこから20分で小屋・・・と、残りの行程を考える。 タカネナデシコの谷、トリカブトの谷、ハクサンフウロ、アオノツガザクラ、 チングルマ、ハクサンイチゲがまだ元気良く残っている谷、ヒメシャジンの谷と、 夏・秋入り混じっている。 ここは、ピークの何番目になるのだろうと考えながら数えるのだが、 忘れてしまうほどの岩場のアップダウンを繰り返し、やっとのことで 東川岳に着いた。14:50。 「熊沢岳から2時間で小屋着」にしてはいいスピードで来てしまった。 後は、20分下るのみ。ここでゆっくりすることにする。 空木岳が目の前にゴツゴツの山肌を見せて迫って来る。 縦走路が延々と頂上を目指して続いている。 10分後の15:00に出発。 ザレザレの急な道をつま先と膝に力を入れて降りる。 どこまで降りるのかしら、地図に「常水」とあるなら、 一番底の谷まで下りるのかしらと話しながら、ずるっと滑らないように気を付けて 降りていくと、赤い屋根の小屋とHの白いマーク(ヘリポート)がやっと見えた。 木曽殿越、15:20着。
宿泊手続きの後、へリポートで夕食。 まだ日没には早く、じりじりと照らされながら宴会。 続々と山を下りてくる人が増え、とうとう超満員。 遅くなってから来た人の食事を急き立てるように片付け、 食堂の机を片付け、すぐ布団敷きが始まる。 2階は食事つきの人。1階は素泊まりの人と分けられて就寝。 夜中に「えら〜い、えら〜い。」と苦しそうな声。 次の朝、「心臓麻痺かと思った。」と我々の間で話題に出るほど。 パーティーの誰かが面倒を見るだろうと重大事に思っていなかったが、 単独行だとしたら誰にも面倒を見てもらえず・・・ということもあるわけ。怖い怖い。 いつものように息苦しくなったが、しばらく体を起こし、 お茶を飲んだりして収まるのを待ってから寝る。 時計を見るとまだかまだかとかえってイライラするので、 誰かが起きるまでは寝ていようと腹をくくる。 なんと10時間ほども寝てしまった。 発電機の音が聞こえだしてからだいぶたってやっと電気が点いた。 すぐ朝食の準備なので、さっと外へ出る。 昨日部屋の隅に置いてあったザックも全部外に出して、 ぎっしりと布団が敷かれていた。
ヘッドランプの明かりで用意をし、4:55に発。 いきなりの急登。ヘッドランプの明かりを頼りに赤いペンキを探して登る。 どの石も落石を起こしそうで、気を付けて登る。 月がある辺りはぼうっと明るく、時々雲の隙間から「もれいづる月」といったところ。
東の空もだんだん茜色になり、ライトを消す。 御嶽が雲海の上の頭を出している。 休憩時にヘッドランプをザックに片付ける。 ゴツゴツの岩登りがまた始まる。 リーダーは背が高いので、私が難渋している岩場でもすいすいと登ってしまい、 彼の足の長さをうらやましがることしきり。 昨日今日と巨石・奇岩を何度も何度も見てきたが、 ここ空木岳の巨岩も面白い形をしている。 岩場を登るときは必死で、早く上へ上へとばかり思うが、 終わってしまうと「ああ、もっと岩を楽しんでくればよかった」と後悔。 周りはガスの中。すべてミルク色の中。 一度はここが頂上じゃないかと思われるところもあったが、 標識も何もないのでまだ先なのだろうと前進。 ガスの中で見えなかったが本当の頂上があった。空木岳、6:15着。2864m。
しばらく待つことにして岩陰に入って風を防いでいたが(この頃2〜3℃) ぱあ〜っとガスが晴れるとともに、風がピタッとなくなり陽が差してきて暖かくなった。 「こんな時ブロッケンが見えるんじゃないの」という声が聞こえてきたので、 「ええっ、ほんと?」と思い、手を振ってみると、 本当に前のガスの塊に人陰が映り、それが私と同じように手を振っていた! 「もう後は下るだけ。のんびり景色を楽しんで行こう」ということになり、 水もあることだしここで朝食を作ることにした。 槍・富士・南駒などの展望を楽しみながらラーメン・コーヒーを作る。 晴れていた景色も、パア〜っと一瞬の間にガスが出て何も見えなくなってしまった。 そして、また晴れる・・・と目まぐるしい。
1時間以上のんびりしてから下山開始。 すぐ下の空木岳南駒ヒュッテまでずるっとずるっと滑らないように急な道を降り、 そこから駒石経由の尾根道と、水場経由の避難小屋谷道に分かれていたが、 歯磨き顔洗いをしたいために下の道を選んだ。 シーズンには、周り全部がお花畑といったような草付きの道を歩き、 ゴロゴロの谷を歩き、お花畑のなれの果ての道を歩きして8:00、避難小屋に着。
期待していた水場は雨が降らないせいか深さ5cmくらいのほんの水溜り程度。 でも流れているので澄んでいる。 カップに水を汲み、念願の歯磨き顔洗いをする。 水が豊富なら、前に空木岳を望むお花畑の中の最高のテント場。 ナナカマドの実は真っ赤に色づき、緑色との対比が素晴らしい。 そしていたるところにオヤマリンドウの花。 ここでもゆっくり30分も休憩してから出発。 快適なアップダウンとお花畑の名残りを楽しみながら下りていくが、 行けども行けども下っていないような錯覚をおぼえるほどのたらたら道。
たまには「大地獄」というような垂直な岩場・梯子・ロープのある 緊張する場所もあるが、ほとんどは走ってでも行けそうな道ばかり。 足が嫌がっている。 「もう少し、池山小屋まで。」というリーダーの声で、やっと休めたのが11:00。 小屋の水場でコーヒーを沸かす。 ぱらぱらと木の上で降っていた雨が強くなってくるようだったので 傘を用意したが、無くてもたいしたことはなく、登山口辺りでは止んでいた。 ここでもゆっくり休んで30分後に出発。 とても長く感じられる道で、とうとう足の爪先の辺りが痛くなってきた。 遊歩道や舗装路を何度も突っ切りやっと駐車場に着、13:10。 松川のインター傍の温泉で汗を流してから帰途についた。 |