台風にたたられた・・・ 黒部五郎岳〜雲ノ平 |
黒部五郎岳山頂にて コバイケイソウの第群生 ハクサンシャクナゲ |
●場 所 | 富山県立山町 | |||||||||||||
●標高 | 黒部五郎岳:2600m 2840m:雲ノ平 | ||||||||||||||
●山行日 | 1993年7月27日〜7月30日 | ||||||||||||||
●コース | 折立〜〜太郎平小屋(泊)〜黒部五郎岳〜黒部五郎小舎(泊)〜雲の平山荘(泊)〜 薬師沢〜折立 | ||||||||||||||
●多治見から 登山口まで |
JR多治見駅ーJR名古屋駅ーJR米原駅〜JR富山駅⇒バスで折立へ(登山口) ※ー鉄道 =自動車 ・・・徒歩 ⇒バス ⇔その他 |
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●参加者 | 林、丹羽 | ||||||||||||||
●コースタイム | 前日 7月27日(火)
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前日、7/27(火) 、米原01:20発の北陸線「きたぐに」に乗車するため、自宅を最終のバスで出発。
2時間余、米原駅で待つ。 深夜の駅ではペンキ塗りの改修工事中。 次々と入って来る列車や、「山ヤ」で昼間と変わらない光景。 グリーン席はさすがに座り心地が良く、時々時計を見ながらうつらうつらする。 昼間も寝ているのでそれ程の睡魔はおそってこない。 富山に4:48着。 5:05「折立行直通パス」にすぐ連絡。 予約なしだったが定員に満たないので乗車可。 2時間余のバスの中も眠り、7:00折立終点に着。 列車の中で強い風雨の音を聞いていたが、ここではパラパラ程度。台風の影轡か。 キャンプ場の炊事場で雨宿りをし、朝食を済ませ、雨具を着ける。7:30発。 愛知大学の遭難慰霊碑のそばから太郎坂を登り始める。 ザックが肩に食い込む。久し振りの大荷物。 時々、ザックの底を押し上げながら歩く。 木の根を踏み越え、「よいしょ」の掛け声を掛けながらの急登。 イワナシはもう実になっているな・・・とか、アリドオシのおいしそうな赤い実、アカモノの花、コメツツジの花、ミズバショウの巨大な葉と長い実、ツマトリソウの可憐な白い花・・・ などと左右を見ながら樹林帯を1歩1歩登る。 草原が現れてくると、ニッコウキスゲの鮮やかな橙色と、今年はあたり年のコバイ ケイソウの群落。それにイワイチョウの群落。 コメッツジが、有峰湖をバックにし て咲きほこっている。 風は強いが、雨がそれほどでもないのが有り難い。 草原から延々、幹線道路のような石を敷き詰めた立派な道が上へ上へず〜っと続いているのが見える。 同行者の足取りが軽いのに引き替え、私の足の重いこと。しかしこれでマイぺース。 太郎小屋までずっと引き離されていたが、到着時間は5、6分の遅れ。11:55着。 宿泊手続き、ビールの注文など皆お任せ。 運よく個室がとれ(客が少なければ、 普通料金で個室に泊まれる)畳3枚の部屋でのんびりとする。 時間がたっぷり有るからと散歩に出掛けたが、風が強く、寒くてすぐ引き返す。 2:00〜4:40まで昼寝。 2千円の夕食に期待したが、粗末なもの。 5:00からの夕食の後、晴れ間も見え風も弱くなったので、地図ととカメラを持って山の名前を調べることにする。 薬師、黒部五郎は分かるのでそれらを基に地図を広げて、水晶、三俣蓮華、双六まではなんとか分かったが、山と山の間から見えるゴツゴツとした山は何?で行き詰る。 と、山の標識板があった。ゴツゴツは、北鎌尾根の稜線だって。 写真も撮りまくったが、フィルムの入れ方が悪くて空回りだったことに翌日気がついてガックリ。 夜中、風が強く、ガラス窓がガタガタするのを夢うつつに聞きながら寝る。
4:3起床。個室はよく眠れる。 自炊室はガラ空き。広々とした畳敷きの部屋で、明るい電気の下でパンとコーヒー の朝食。 行動用のお茶も沸かす。 小屋の朝食の時間にトイレも済まし、5:40発、 ガスの中を太郎山に向けて、草原とチングルマと池塘とイワイチョウの中の太郎平の快適な道をルンルンで歩く。 6:45、急な登りでハクサンイチゲを見付けて、北ノ俣岳の肩に着。ぐるりと展望が良い絶好の休憩地。 ガスも晴れ、陽射しも強くなってきたので、つば広の帽子に変える。日焼け止めも。 せっかく登ったのにまた下ってまた登って、雪渓、まだこれから芽出しの時期 を迎える早春地帯を登って、やっと北ノ俣岳に着。7:25。 北ノ俣岳山頂 .雲海の上にそびえる山々が素晴らしい。 ぐるっと回り込んで、黒部五郎岳に向かう。 尾根からの眺めは最高。あの苦しさの後のこの喜びがあるからこそ、毎年毎年夏山に誘われて来てしまう。 なんでもない登山道の通過点に赤木岳。 ムシトリスミレ、ミヤマリンドウ、相変わらずのチングルマ・ハクサンイチゲ. コイワカガミ・アオノツガザクラ・コバイケイソウ・ハクサンシャクナゲなどをたっぷりと見ながら、中俣乗越まで下ってしまう。 チングルマ ハクサンシャクナゲ 水晶岳、これから登る黒部五郎、遠くに見える剣などを撮る。 黒部五郎の登りは、見上げるような急登。「きつい尾根」と書いてあったが、まったくその遜り。 ハイマツと岩礫とミヤマダイコンソウ・トウヤクリンドウ・タカネツメクサ・チシマギキョウ・たった1輪のイワウメなどを見ながら、「スー」で左足、 「ハー」で右足などと考えながら1歩1歩足を前へ出す。 じりじりと太陽こ照らされながら、やっとのことで黒部五郎の肩に着。10:55。 ミヤマダイコンソウ チシマギキョウ 槍が見えていたのも一瞬。すぐガスが出てきて槍方面は何も見えず。 10分はど軽く登って頂上着。11:35。 黒部五郎岳山頂 薬師の方だけは展望は良いが、今来た北ノ俣岳方面もガスが出始め、せっかくの頂上なのにつまらないこと。 ず〜うっと下にみえる赤い小屋が今日の宿泊地。 「肩」に戻りラ−メンで昼食とする。 尾根からグングン下っていくと、何人かの登山者が雪渓のところで固まっているのが小さく見える。 ザーザーと沢の昔も聞こえてくるので、どうも水場らしい。 シナノキンバイの鮮やかな黄色と、白いハクサンイチゲに囲まれたジグザグの道をぐんぐん降りて、つめた〜い水がゴウゴウと流れている雪渓の端に出る。 今日の行程は、小屋へ行くだけ。 こんないい所で休まずにして一体どこで休むのか・・・と思い、冷たあ〜い水を何杯も飲み、岩の上にごろ寝して昼寝。(この冷たい水のせいか、夜、腹痛を起こす) 黒部五郎カールの雪渓を眺め、青い空を見上げ、涼しい沢の音を聞きながら至福の時を過ごす。 小舎までの道もお花細の中。 樹林帯あり、池塘あり、沢あり。後ろには雪渓が残る山々。 頂上から1時間半の道程をのんびりゆっくり2時間かけて歩き、黒部五郎小舎に14:10着。 小舎は、黒部平(黒部乗越)のコバイケイソウ大群生に囲まれた素晴らしい場所に建っている。 まずは、ビールで乾杯。台の上で昼寝もしてしまう。 ザックは、1階に置き、2階へ上がる。 ここは、後から来た登山者のほうが明るくて広い1階に入れるなんて妙な方法を取っている。 2枚の布団に3人。トイレへ行く通路もない。 ずっと前、八ヶ岳でガラガラ空き空きの硫黄小屋で泊まったことを思い出してしまった。 夕食はおいしそうな野菜のテンプラと蕎麦。 昨日の夕食と比べて天地の差。 しかし油っこくて胃にもたれ、さっきの冷たい雪渓の水ともあいまって、二人とも薬のお世話になる。 台風が近付いて来るので天気図を見たいのだが、BS:TVしか入らず、何時に天気予報があるかも分からないのでTVの声を聞いて慌てて2階から駆け降りた。 台風は九州に近付き、明日、日本海を通過するとのこと。 朝早く行動し、台風と追いかけっこで小屋に入ることにする。 トイレの臭いが鼻に付き、一晩中腹痛とのダブルパンチ。
4:30、起床。 暗がりの中を階下に行き、ザックを持って外でガスを付ける。 5:25、発。 すぐの急登はえらい。 樹林帯を抜けない限り尾棍へもお花畑へも出られない。 キヌガサソウの大輪に、「今年も会えたね」と嬉しくなる。 キヌガサソウ 尾根にはまだ雪渓が残り、早春の風景かと思えば、チングルマがもう種になっていたりで、春・夏・秋が同居している。 三俣山荘へは、頂上を踏まず、お花畑の道を選ぶ。 相変わらず、ハクサンイチゲ ・シナノキンバイ・アオノツガザクラ・ミヤマダイコンソウ・コバイケイソウ・キバナシャクナゲ・モミジカラマツなどを見ながらの散策。 6:00、7:00とラジオを聞きながら、黒い雲に追い掛けられながらどんどん歩く。 一度、こんなに登っては稜線まで出てしまうのでは?と心配になったが、踏み跡をたどってひと山越え、雪渓を渡り、三俣山荘への下りになる。 追い抜いて行ったパーティーが、もうテントを張っている。こんな早い時間なのに。 黒部源流付近も花・花・花でいっぱい。 シナノキンバイ・ハクサンイチゲ・コバイケイソウ・コイワカガミ・ナナカマド・イワウチワなど。 源流を渡って、またまた見上げるような登りにかかる。 昨日の黒部岳への登りで慣れているので、「とにかく足を1歩1歩出していけば必ず着くのだから、それも標準コースタイムと同じか、やや早いくらいなのだから」と自分に言い聞かせ登る。 今日はじりじりではないので、涼しくて楽なのが有りがたい。 登りきったところから、ぼつりぼつりと雨。まだ、9:35なのに。 しかし、この雨はすぐ止んだ。 せっかく着た雨具は暑くて雪田の手前で脱ぐ。 祖父岳のなだらかな斜面を右に見ながら、たらたらの道を歩いていると、もうそこ は「日本庭園」の表示。 薬師岳、剣、五色ケ原などを前に、後ろは黒雲に迫られてはい るが静かな高原風の道を歩く。 祖父岳も、天気がよければ登るはずにしていたが、何時降ってくるか、雨に追い掛けられているのでパス。 下に見える雲ノ平山荘へとどんどん降りて行く。 我々は、明るい方へ進んでいくので展望もいいのだが、反対方向に進む人達は黒い雲に向かって進むのだからどんなにか心細いだろうと人ごとながら心配する。 とうとう雨具を着なければいけないほど降ってきたのは、テント場のすぐ近く。 山荘は、テント場を過ぎ、軽く登って降りたところ。まだ20分くらいはありそう。 傘をさし、強くなった風に飛ばされないようにし、こんな川の中のようなところにテントを張り、増水したら大変だと思いながらテント場を過ぎ、木道を滑らないように歩き、周りの植物にも目をやりながら、ひたすら山荘を目指す。 雲ノ平山荘着、11:20。 びしょ濡れで入る。乾燥室で雨具を乾かす。 しかし、どんどん 入ってくるびしょ濡れの登山者が多いので早々に取り込む。 初め、ザックは2階の通路に置いていたし、食堂で優雅にビール・コーヒータイ ムをとっていたが、どんどん増える登山者と交替して布団に陣取る。 することもなく、時間になったら天気予報を聞いている。 4:00の気象通報も天気図がないので北緯何度がどの辺りか、東経何度がどこなのか分からず。 そうこうしているうちに、登山者はどんどん増え、過密状態も軽くオーバー。 ザックは1階に下ろす。 夕食も到着順ではなく、早いもん順で不満の声が上がる。布団割りもご破算にして入れ替える・・・などと小屋番さんが言うものだから、またまた不満の声。 要領が悪い。 1回目の食事に36名、3回目までには全員済ませると言う事だが、だれかの発案で私設順番表を作り、並ばなくても済むようになってほっ。 2千円にしては情けない夕食を食べ、映りの悪いTVで天気予報を聞き、「台風は、今日日本海を進み、明日朝には秋田沖に出る」・・・ということだが、下山予定の沢の増水も心配だし、高天原へ行くと帰りはその沢を通らないと時間がかかり過ぎるし、温泉への道は崩壊して危険だという情報があるし、温泉へ行けないのなら高天ケ原へ行く意味も少なくなるし、せっかくここまで来たのにこのまま帰ってしまうのは何 としても残念だし…といろいろな思いが交錯する。 小屋の窓は、ビューーピュー打ち付ける風と雨で、まだまだ台風が遠ざかっていないことが分かる。 隣の人と密着して寝苦しいので、頭と足を入れ替える。 両横にゆとりができなんとか楽になる。 しかし、頭の上にもT字型になるように人が寝ているので、ぶつからないためには時々ずり下がらなければならない。 そのうえ、雨が強くなると雨漏りが始まり、顔の上に、ポツンポツン。 最初は、 空気抜けのために開けておいた窓から入り込むのかと思っていたのだが、閉めても ボツンポツンなので雨漏りと分かる。
4:30、起床。暗い中、人を跨いでやっとトイレへ行く。 ここには水場がないので、2人分の水1リットルを調理場のお兄さんに水筒へ入れてもらい、今日の飲料用にする。 2階には人がいっぱい、廊下はザックで いっぱい、食堂は朝食の用意で入れず、外へ脱出するしかない。 雨、ガス、風の中で、紅茶を沸かし携帯用にする。 「後、少し待っていれば、天 気はよくなるよ」の声にも、中に居場所がなく、外はひさしもなく、待つ所もない。 私のせっかちに押されるように、同行者から出発の声。5:45発。 雲ノ平のお花畑も、ガスでぼんやりとしか見えず。 岩伝いにぴょんぴょんと行くので、足元が滑らないよう注意もし、ぼんやり見えるペンキも探さなければならないので、せっかくの雲ノ平だが1枚の写真も撮らず過ぎてしまう。 途中の登山道には、木道用に分厚い立派な板がヘリコプターからワイヤーをぷつ んと切って落としたように何個も何個も落としてある。 そこをよじ登り跨ぎ越し、迂回して歩く。命中率は大したもの。 途中、たらたらの所へくると、尾瀬のような木道が延々と続いている。 な・な・ な・なにこれは?と、びっくり。もしかして、薬師沢まで伸びている?と思うほどずう〜っと続いている。 そこをすいすいと何の苦もなく、街を歩いているような スピ−ドで歩けてしまう。 雲ノ平も、便利で近くなってしまうのかと思っていたら、やっぱり、下りの所には木道は作れないようで、滑りやすい泥だらけの岩・岩に手をかけ足をかけて下る。長い長い下り。 沢の昔に励まされ、あそこまで行くと薬師沢小屋だと思いながら下る。 そのうち、青空も見え始め、暑くもなってきたので雨具を上だけ脱ぐ。涼しい。 やっと、薬師沢に着、9:05。 雨具の泥を洗い、顔を洗い、コーヒー・ラーメンを作り、歯も磨いて出発。10:05。 小屋には、「A沢、B沢、C沢などが雨のため崩壊して注意しているので行くように」との看板が出ていた。 小屋からぐんぐんと上がった所がカベッケが原。アイヌ語かしら? 太郎平までの道は花が多く、楽しんで歩けて50分があっというまに過ぎてしまうほど。 ムシトリスミレ・リュウキンカ・ハクサンチドリ・キバナノコマノツメ・ ニッコウキスゲ・コバイケイソウ・ゴゼンタチバナ・オオバキスミレ・チングルマ ・イワウチワなどいっぱい。 ミヤマダイモンジソウ ムシトリスミレ リュウキンカ しかし、川からの登りは辛く、ここを登れば太郎小屋と分かっていてもなかなか着かない。 さっきの青空もどこかへ行ってしまい、小屋は来たときと同じようなガスの中。 今日は土曜日、昨日のような超、超、過密の小屋はもう願い下げ。 この足で下山できるかバスの時刻を調べると、最終のバスに乗れば、富山へ18:02に着けると分かったので、ビールを飲みながら歩くことにする。 さっきまで、暑くて暑くて半袖1枚で歩いていたのに、ガスと風でプルプル。 雨具を着込み、15:50のバスに間に合わせようとぐんぐん降りる。 途中何十人も の登山者と擦れ違い、とぎれることがない。あの登山者達と小屋で泊まらなくて正解だったと思いながら、どんどん歩く。 3時間のところを、2時間半で折立に着。15:25。 バスの出発までに、着替え、頗洗いをし、無料サービスのお茶もいただき、雨の降りだした中をバスに乗り込む。 有峰で電車に乗換え、時刻表と首っ引きで名古屋・多治見に何時に帰れるか調べる。 名古屋、22:59、多治見、24:00着と分かりほっとする。 |