雨とガスの中の 八ヶ岳縦走 |
硫黄岳石室 赤岳への登り 雲海の上の富士山 |
●場 所 | 長野県茅野市 | |||||||
●標高 | 東天狗岳 2646m 硫黄岳 2760m 横岳 2829m 赤岳 2899m |
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●山行日 | 1987年8月22日(土)〜8月25日(火) | ||||||||
●多治見から 登山口まで |
JR多治見駅ーJR茅野駅⇒麦草峠 ※ー鉄道 =自動車 ・・・徒歩 ⇒バス ⇔その他 |
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●参加者 | 早川、林、丹羽 | ||||||||
●コースタイム | 1日目 8月22日(土)
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特急「しなの」で、2人と合流して、茅野へ。 麦草峠行きのバスに乗車。麦草ヒュッテ前バス停で下車。 ヒュッテの周りはお花畑。その真ん中を通って木立の中へ。 雨が降ったばかりのようで、水溜りはあちこちにあり、岩はごろごろして歩き難いし、 濡れた木の根や岩は滑りやすいので避けたり跨いだりするので疲れる。 今日は久しぶりの重登山靴(軽登山靴は連日の雨だとぐっしょり濡れてしまうから)足が重い。
少し登ったら雨が降り始めた。雨具を付ける。 2人はゴアテックスの雨具。私はハイパロンの新品。 後で比較したが、ゴアテックスは見事に防水防湿効果があるが、 ハイパロンは、外からの雨ははじくが裏にびっしょり水滴がついて 結局ズボンも服もべたべたになってしまった。 今度はゴアテックスを買おうっと決めた。
ここ北八ヶ岳は雨が多いのか,原生林の様。 倒れた木の上に苔が付き、その上にまた倒れた木と苔があるというようになっていて ふんわりした森。 「斧絶ちの森」と地図にある。 今回は、岩場・鎖場といった危険地帯を通るので、「荷物の軽量化を図るように」と 言われてきたが、小屋泊まりとはいえ、朝早く立つので(朝食無しの1泊1食) 行動食が3泊4日分必要となるので結構重い。
1つ目のピーク丸山着。13:05。 ガスのため視界が悪く何も見えず通過。 今度は少し下って高見石小屋の前を通ってまた急登。足が重い。 後ろから見ていたサブリーダーが、「いつもの丹羽さんの軽快な足取りではないね。 やっぱり丹羽さんもフツーの人だな。」と思っていたそうな。 ゴゼンタチバナとマイヅルソウの葉っぱばかり。 小雨になればフードを外して歩く。雨というよりガスで濡れるため雨具は着けたまま。 まだまだ登りが続く。
3回、各10分休憩を取って、中山展望台へ、14:57着。 展望のいいピークだが、視界数メートルでミルク色のガスしか見えず通過。 中山山頂通過。2つ目のピーク。 今度は下り。花は少ない。アキノキリンソウ・カニコウモリがあるくらい。 中山峠、15:28。.右折して黒百合ヒュッテへ。 黒百合平という名前が付くほどだから黒百合が多いそうだが、今日は1本も見えず。 ロープで囲まれた道を10分ほど歩いて、ヒュッテ着。15:35.。 会計なので宿泊手続きをする。4200円。
ふとん割りがすむまで待たなければならない。 外で16:00からのラジオの気象通報を聞く。 停滞前線が本州の南部にずっとかかっていてよくないことが分かった。 長袖を着てもゾクゾクして寒いので詳細は中へ入ってからにして ザックともどもストーブの傍らに寄る。 ここは電気無し、ランプの宿。
2階のふとん割りが決まった。 布団と布団が30cmばかり重なってはいるが、一応1人1枚のシーツあり布団。 掛け布団は隣と共有。 17:30の夕食まで待てず、ビールで宴会。 軽量化のため、おつまみもあまりなし。 明日の話などしていると夕食になった。カレーのお代わりあり。 食べてしまえばすることも無し。貴重品だけ持ってザックは階下に置いて2階へ。
横になって目をつぶっていればすぐ眠れるので、山小屋シーツにもぐりこむ。 外では、若者グループがなつかしのメロディーを大声で歌っているのを聞きながら眠る。 ふと目が覚めた。階下から大きな話し声が筒抜け。 女性1名。男性2〜3名らしい。 辺り構わずの内容と大きな声のため、とうとう小屋番さんが、 「もうすぐ9時ですよ。うるさくて2階では眠れやしませんよ。静かにしてください」と注意。 消灯は8時なのにね。それでもまだ続けているので、 グループの人が注意してやっと終わった。 その後、その女性が2回も階段から転げ落ちるというおまけが付いたので、 先程の腹立たしさがやっと収まって以後ぐっすり朝まで眠れた。
昨夜、雨もやみ明るくなっていたのに、今朝は雨だれの音が聞こえる。 4:00起床。 ヘッドランプをつけて階下に下りて、お湯を沸かしてコーヒー作り。 起きてすぐの朝食にもやっと慣れた。 軽くパンを食べて出かけるだけにしてから、今後の相談。 今日の一番難関の横岳はとても無理。 赤岳石室泊の予定を替えて、硫黄岳石室泊にするか、 もっと軟弱なら本沢温泉泊にしようか・・・などと冗談を交えながら雨の止むのを待つ。 結局一番早く起きて一番遅く出発。8:32。
小雨になったのでそれっと出たけれど、やっぱり小雨とガスと風で 辺りは視界数メートルのミルク色。 昨日の中山峠まで戻り、右折。 岩ゴロゴロの水溜りの道をぐんぐん登る。 花が少ないので楽しみも無く、周りの景色を見る楽しみも無く、雨に濡れて歩くだけ。 やっとトウヤクリンドウが現れた。縞々模様のつぼみが上を向いている。 トウヤクリンドウ 登りに登ってやっと東天狗。3つ目のピーク。9:53。 西天狗もあるが、パス。5分休んだだけですぐ下りにかかる。
ここから急に花が多くなった。 コバノコゴメグサ・ウメバチソウ・チシマギキョウ・タカネシオガマ・イブキジャコウソウ・ イワオトギリ・イワオウギ・コケモモの実など。 根石岳はそれと知らずに通過。4つ目のピーク。 両側にロープが出てきた。コマクサの群生地保護のため。 この後もうんざりするほどコマクサに会えた。
根石山荘で休憩。10:45。 お湯を沸かしてコーヒーだけでは小屋番さんに悪いなと思って、ラーメンを頼んだ。 これがなかなか美味。 いろいろ野菜も入って、麺もシコシコして汁一滴残さず全部おなかの中。 いい加減パンなどの行動食に飽きていたせいもある。 ゆっくり休んで11:20出発。また雨の中へ。 コマクサ街道を通り、ひと山登ると、箕冠山。5つ目のピーク。 先程のコマクサ地帯より標高が高いのに日本庭園風の苔むした樹林帯。 平坦な道をしばらく降りると夏沢峠。11:52。 ここから本沢温泉に降りれるが、3人とも体調はよし、時間も早いので 硫黄岳への登りにかかる。 イワツメクサ
体調はいいが登りはエライ。 できるだけ直登は避けて、大回りでもジグザグに登る。 休むよりゆっくりでいいから1歩1歩前進する方が結局は早く着く。 硫黄岳に着。6つ目のピーク。 「雄大な展望」のはずも、ミルク色の向こうで何も見えず、下りにかかる。 どこを通っても通れそうな山頂を左へ降りていく。 コマクサ保護の針金の間を下って、硫黄岳石室に到着。
先客は親子2人連れのみ。 雨のやむのを待っているとか。 宿泊手続きをして(4200円)、雨具を竿にかけ、ワインで乾杯。 小雨になったので、高山植物園を見学に行く。 18時の夕食までの時間を持て余して、売店にあるパンフレットや写真集を見て 花の復習をする。 気象通報を聞いて、夕食を食べて山の天気予報を聞いて (八ヶ岳の明日は曇り・ガス・時々晴れま。午後にわか雨)晴れることを願って就寝。 がら空きの部屋。300人の定員の所10数名。
4:00起床。雨は降っていないがガス。 ヘッドランプをつけて朝食。 5:00出発予定だったが、雨で濡れている横岳は危険なので、 もう1日ここで停滞するか、下山してしまうか・・・とそんな相談をしているうちに、 外がだんだん明るくなり、ガスが薄くなってきそう。 硫黄岳石室前で これから出発
もしかして・・・と期待しているうちに、サーっと陽が差し、上は青空になった。 小屋番さんが「今のうちに出かけたらどうですか。横岳も風が無ければ大丈夫ですよ。 こんなガスの日にブロッケン現象もできるんですよ。」と後押し。 リーダーが、「10分後に出発!!」と宣言。 5:50出発。
周りの山々が初めて緑色に見える感激。 下界が、遠くの峰々が、歩いてきた縦走路が、くっきり見える喜び。 これこそ山登り、山歩き!! 嫌になるほどのコマクサとコバノコゴメグサを両側に見て、またきつい登りで横岳に取り付く。 コバノコゴメグサ カメラも片づけ、帽子も吹き飛ばされないように片付け、バンダナで髪を包んで 最大の難関を前に、心臓がドキドキ。 ところが終わってみれば、宝剣岳や槍ヶ岳ほどでもないことが分かった。 しかし、重い荷物と手ぶらの違いはあるのでやはり慎重さが必要。
リーダーから「三点確保をしっかりやってね。」と何度も声がかかる。 私が一番経験が浅い。 今日はウールの長靴下の上に短い靴下の2枚履きなので靴にぴったりで快適。 昨日までは、靴下の組み合わせが薄めで余分な遊びがあったため 不安定だったんだと納得。 余裕をもって足が出せる。 鎖場やカニのヨコバイも落ち着いて難なく通過。風も対して強くもないので幸運。 6:42、横岳奥の院に到着。7つ目のピーク。 横岳山頂
周りにはウルップソウの残りが一面に。 ガスは下からどんどん流れて来て山々を隠すが、すぐまた流れ去っていく。 はるかはるかずっと向こうの雲海の上に富士山が見えた。↓ 赤ペンキの○や白ペンキの矢印や×に気を付けて行けば 絶壁の上で行き止まりということもなく降りていける。(親子が立ち往生していた) この頃から急に登山者が多くなり、何回もやり過ごしたり待ったりした。 風呂があると言われている赤岳石室で休憩。8:15〜8:20。 赤岳への急登が、目の前に迫っている。 赤岳への登り タカネシオガマ
落石が起こりそうなガレ場ばかりの登りのあと、赤岳頂上に着、8:52。8つ目のピーク。 山荘のある所は北峰。ザックを置いて南峰へ。 富士山を見ながら休憩。 ふくらはぎの痛いサブリーダーもゆっくりなら歩いて行けるそうなので 降りた所で中岳へ行くか阿弥陀へ行くか決めることにする。 岩場・鎖場を降りてザレ場のジグザグへ出る。 下り切った所でまた中岳への登りになる。 下山するか中岳へ登るか・・・ ゆっくり中岳へ登ることに決まった。 行者小屋を見下ろす 中岳山頂 見上げるような急登の山も、ゆっくりゆっくりで難なく中岳頂上に着。 10:44〜10:53。9つ目のピーク。 「阿弥陀へ二人でいってらっしゃい。」と勧められたが、 以前に別行動を批判されたので止めて下山することに決める。
この道が花の道で夏と秋の花がいっぱい咲きそろっていて 何度もカメラ休憩を撮った。 トリカブト・サラシナショウマ・アザミの仲間・オヤマリンドウ・タケシマランの実など オヤマリンドウ サラシナショウマ タカネコウリンカ アザミの仲間 ミヤマシシウド トリカブト 花を見ながら行者小屋に着。12:25。 たっぷりの水で顔を洗う。12:50発。
約40分で今日の宿、赤岳鉱泉へ。4500円。 ヤナギランの紫とオンタデの白とピンクの種・ミヤマキノキリンソウの黄色が美しい小屋。 南側の部屋は日向の臭いのお布団。 高校生の団体が来るとかで部屋替え。北側の部屋になってしまった。 今日歩いてきた稜線がぐるりと見上げれる部屋。 ところが隣に入った高校生のうるさいこと。 9時の消灯までおもいっきり暴れ、消灯後もドスン・バタン・ワアーとうるさいので リーダーが2回、私が1回注意したが、なかなか静かにできず寝そびれた。 今度は相部屋のカップルの男の子がゴーゴーといびき。 「いびきがうるさいです。」と言ってやっと静かになった。 こんな所に泊まるんじゃなかったと、3人ともぼやくことしきり。
4:00起床。何も食べずに4:30出発。 真っ暗。ヘッドランプの明かりで行動。 雨が降っていたので雨具を付ける。 谷川の道と山側の道と分かれていたが、距離が近いと思われた山道を選んだ。 しかし、これはまちがい。大幅に遅れ、バスに乗れずタクシーを頼むことになった。 そのおかげでリンネソウに出会ったが。 2回滑って転び、1回帽子を落として拾いに戻ったりして、川沿いの道に合流。 ホタルブクロ・クガイソウ・ハナイカリ・オダマキ・ワレモコウ・ミヤマモジズリ・ ママコナなどいろいろ見ながら美濃戸山荘へ。
美濃戸口まで歩き、タクシーで茅野駅へ。8:18〜8:28発。 塩尻ですぐ特急「しなの」に連絡。 朝食兼昼食とビールで乾杯して、今回の山行は終了。 |