上高地〜岳沢〜西穂のコル 




登りの途中


西穂のコルで2人を見送る
●場 所 長野県松本市
●標高 西穂高岳 2909m 岳沢ヒュッテ 2170m
●山行日 1991年5月3日〜5月5日
●コース 上高地・・・岳沢ヒュッテ・・・西穂のコル往復
●多治見から
   登山口まで
JR多治見駅ーJR千種駅ーJR松本駅=タクシー相乗りで上高地へ(登山口)
※ー鉄道 =自動車 ・・・徒歩 ⇒バス ⇔その他
●参加者 谷口、黒宮、林、丹羽=西穂高グループ
佐藤ファミリー(父親・男の子2人)=岳沢グループ
●コースタイム 1日目 5月3日(金) 
JR千種駅
JR松本駅
上高地
岳沢ヒュッテ:テント場
7:16発
9:16〜9:30発
11:10〜11:40
14:10着
2日目 5月4日(土)
テント場
分岐
コル
テント場
・・・
9:40
11:30〜12:00頃
13:30頃着
3日目 5月5日(日)
テント場
上高地
8:00発
・・・
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1日目  5月3日(金)

しなの」と車で上高地へ

JR千種駅で乗車。車内で女性メンバーと合流。
男性やファミリーは車で別行動。

「しなの」は満員。指定席での立ちん棒。
立っているのはいいが、車両が揺れて車酔い同然となり、
まだかまだかと降車を待ち望む。

2時間後にJR松本駅のプラットホームに下車。

人数がそろえばタクシーでも電鉄+バスと同じくらいの金額になるということで、
単独行の男性とカップルを誘い、5人でタクシーに乗り込む。

普通ならタクシーも出払っているところ、運よく待機していた車があり、
幸先がいいねと喜び合う。

タクシーの中からは、春の雪とヤマザクラの取り合わせ、新芽の薄緑色の初々しさ、
庭に咲くハナズオウの濃い桃色、リンゴの白い花、町並木のライラックなどに歓声。

途中からチラホラ雪が舞い、道路の端には除雪された汚れた雪の山。
トンネルを出るたびに雪が多くなり、雪山の観。

1時間半後に上高地に着

車組と合流して

バスターミナルは大勢の観光客。

車で来ている男性メンバー2人を探して、合流。

雨具を着、ロングスパッツをつけ、ピッケルのプロテクターを取り、
食料を男性2人に渡し、代わりにトマトとパンを持ち、11:40出発。

「銀座通り」を抜け、河童橋を渡り、梓川に沿ってしばらく歩き、
岳沢登山口」の標識から左の山道に入る。

銀世界の中を歩いてテント場へ

昨日の積雪か、ふわふわの雪と踏み固められた滑りやすい道。
右も左も真っ白の銀世界。
橋も白くかたまり、こわごわ渡る。

いつものごとく、速足の男性メンバーとゆっくり好きの女性メンバーに分かれ
しばらく歩くが、今回どうした風の吹き回しか、リーダーは「後ろから行きます」と。
30分たった12:10頃休憩。

上着を脱いで、頭より高いザックの上に縛り付けて出発。

13:10、アイゼンを着ける。

山は墨絵風で、そこにあるらしいと思えるぐらいしか見えない。

左側に石ゴロゴロの谷を見、Cという標識を確認。

ヒュッテまでを10に分けてあるらしいので、まだ半分かとがっくり来て、
下ばかり見て歩いていると、「あんなところでテントを張っている人がいる」の声で、
振り仰ぐと、雪をブロックに切ってレンガのように積んでいたり、
テントを張ったりしている人たちが見えた。

そこが今日のゴールだとも気付かずテントの間を歩いていると、
「あった!」の声で見上げると、若者が手を振っていた。14:10着。

テント設営とビール購入

3時間で着けるだろうかと不安だったが、ちゃあんと着いた。

さあ、ビールだ!」の声に、「それが私の任務なら(会計担当)行きます」
と言って出かける。

テント村の間を抜け、左へ降り、広い谷を渡った向こう側にヒュッテが見える。
ピッケルをしっかり持って注意して降りる。

広い雪原のような谷を過ぎ、入り口はどこかを聞いてヒュッテの売店へ。
ビール10本、お酒3本を買う。

ついでにトイレを借りたが、簡易水洗で、常時水がチョロチョロ流れている
清潔なトイレだった。紙は焼却するとのこと。

テントに戻るのも一苦労

ヒュッテの外へ出ると、ホワイトアウトのように天も地も真っ白。
かろうじて踏み跡がうっすら分かる程度。

もと来た道を注意深く戻り、対岸へ上がり、テント村の間を抜けて「ただいま〜」

まだ、床の修理中で、スコップで雪を平らに削り高低差が無いようにしている最中。

「丹羽さん、途中でビール持ったまま死んでないかと心配していたよ」とか、
ビールは離さないでしっかり持ったままだな」などとかからかわれるので、
「ビール飲んでから死ぬわ」と答えると、「やっぱり」と言って大笑いになった。

5人用テントと3人用テント

スコップを貸してもらって、平らに削ってみると、今度は「そこへ寝てみて」の注文で
「嘘?ほんとに?」と言いながらも雪の上に寝てみる。

平らである。
ではテントを張ろう。私たちはトイレ作りということで分担。

少し下った谷間で、U字型にへこませ、足台と階段を作って、トイレ完了。

さあ、夕食の準備。
5人用のファミリー向きテントで鍋の準備
もう一つの3人用テントで、子どもたちのカレーを作る。

材料は全部洗って切ってあるので、コンソメスープの中に入れて行くだけだが、
なかなかおいしい。
ビールで乾杯〜!
お・い・し〜い。冷たあ〜い。
軽く2本空けてしまった。

子ども達がガスに近づかないよう、父親ははらはら
テントの床は、体温やガスの熱で雪が融け、中央が陥没して、
材料がみんな中央につるりと滑り込んでしまいそう。

それを足の間に挟んで引き止め、次々と材料を入れて食べる。

大人の時間も終了

一応夕食が終わり、片付けてからは大人の時間。
もう一つの3人用テントに集まる。
ウィスキーが出るけれど、「私には強すぎる」と断ると、「お湯割りならどう」と勧められ
飲んでみると軽い軽い。どんどん入ってしまう。

飲みながらしゃべり、笑い合う。
子ども達の父親は疲れてダウン。

若者が5人用テントに行き、こちらは3人。

夜中、雨具を着なかったことと、足の下がシートだけだったことなどで寒かった
途中から帽子は被ったので頭は暖か。

2日目は、雨具の上下を着込み、タオルを首と口元に置いたところ、
なかなか具合がよかった。

個人用マットの横幅と、体の幅がギリギリなので、
体が少しでもマットからはみ出すと、スースーと冷たくなる。
手探りで、マットの位置を確かめ寝ると暖かいことに気づいた。

2日目  5月4日(土)

い〜い天気

5:30、起床。
シュラフを片付け、大きいテントで朝食作り。

昨日の洋風鍋に農協ご飯を入れて雑炊にする。
少しご飯が足りなくて物足りなかった。

3人用テントでは、雪を溶かしてお湯を作っている。
テルモスにお湯を入れてもらって、準備OK。

    
      岳沢のテント場から見上げた穂高

  
      これも、岳沢のテント場から見上げた穂高

  
     これも、岳沢のテント場から見上げた穂高

  
    谷の対岸から
     あのてっぺんまで行くつもりだったが・・・


子ども達はいったんテントへ

必要なものだけ入れたザックを背負い待っていると、
2人の子どもが1人前の格好をして次々とテントから出されてくるが、
「ウェ〜ン、足が冷たいよう」「寒いよう」と2人して泣き始めたので、
もう一度靴を脱いでテントへ逆戻り

4人で出かけることになった。

少し下へ行き、谷へ降り、谷を渡り、向こう側の山側へ取り付く。

最初はルンルン気分だったが

天気は快晴。雲ひとつなし
北アルプスのファンになりそう。
最初はルンルン
。ぐるり山に囲まれた絶好の地。

しばらくは西穂沢へ向かって平行移動。
それから直登に移ってしばらく休憩。

  
    急登の途中で

      
    これも、急登の途中で            稜線を仰ぐ

  
    急登の後、1回目の休憩地より

  
   まだルンルン気分が残っていたころ

  
    真正面の山 ずっと下に、上高地と梓川が見下ろせる

雪崩の危険地帯!

雪崩の危険地帯だから早く通過します」「バテてもいいから早く歩いてください」
と言われて少し緊張。

谷を横切り、いよいよここからが本格的な直登の連続。ところが足が上がらない
前へ出ない。

  
    足が上がらない・・・

ピッケル一押しで、良くて二足。悪い時は一足。
上を見るとずっと上にリーダーの背中か、下を見下ろしている顔がある。

途中から、若者に「一番後ろへ」と指示が出る。

左や右にコロコロと「雪まくり」のような雪が転がり落ちてくる。
だんだんその数が多くなってくる。

  
  バテている丹羽さんのための休憩  

足が動かない上に足が攣った・・・

「右と左に分かれている分岐が9:04ですよ」と記録を促し、
「記録は誰だった?」「丹羽さん」「会計と炊事と記録ではたいへん」
と言って記録係は解任。

「30分で一回休憩しますが、早く登りましょう」と言われるが、
なんといったって足が動かない
心臓は苦しい。
アイゼンには雪が着きすぐ重くなる。

急傾斜の所でカンカンとピッケルで雪を落としながら登る。

途中で順番を代ろうとすると「ダメ。順番は変えていけません」とお叱り。
コルまで何回休んだだろう。

「3回目休みま〜す」といったら、「そんな危険な所で休んでいてはダメです。
ゆっくりでいいから登りなさい」とまた叱られる。

11:30には、コルへ出られるな・・・と、自分の目算通りに着いたが、
右と左で計5カ所も足が攣ってしまい、最後の5分の痛かったこと・・・

リーダー達2人で山頂を目指す

リーダーと若者は、ザイルで西穂へ向かい、我々女性はコルで一休み。
先に着いていたパーティーも、ザイルを扱いながら岩稜へ登っていく。(手前)

  
   岩の急登をアンザイレンで登る2人(ずっと上の方)

       
   西穂を目指す2人(まだ青空)      あっという間にガスが出てきて、何も見えず

コルはぽかぽかの陽だまり。
昼寝に最高。
ザックの上に寝転び、2人を見送る。

リーダー達2人は西穂へ登って、向こう側から下山

我々女性組はここから下山と別れることにして、「12:00には降りよう」と言っていたが、
急にガスが出てきて、どんどん勢いを増し、2人の姿も見えたり隠れたり。

ガスが出てきたので、下山開始

12:00下山のはずだったが、ガスの勢いがますます激しくなり
足元も分からなくなりそうで怖いので、
「頂上まで1時間半もかかるので引き返します」
「感度良好、了解」だったが、2人を待たずに下山することにする。

  
     雲が多くなってきた

足はすっかり治ったので一安心。

初めのうちは踏み跡もしっかりしていたが、すぐになくなってしまった。
おかしい、おかしいと思いながら雪道を泳ぐように探すがすぐまた消えてしまう。

ズブリズブリと沈みながら下山していると、後ろの二人も姿が見え始めた。

ガスがどんどん広がる。

  
   ガスが広がってきた

  
   登りに使ったラッセルの跡も全部消され、谷筋全部雪崩の跡
    あっという間に足元まで見えなくなってしまう小雪崩の跡
   
  
   さっきまでの青空はどこへ行ってしまった?

走って降りろ〜!

すると、「おうい、雪崩だよ〜 走って早く降りろ!」の声と一緒に
リーダーたち2人が駆け抜けていった。

真似しようと思っても、足が前へ出ない。
腿まで雪にうずまり、どうやって走れるのだろう。

確かにトレースは消え、ゴロゴロした雪の塊がいっぱいに広がっている。

少し固い所はシリセードで滑り、傾斜が緩く止まってしまったら走り
またシリセード、また走りというように一気に降りてしまった。

  
    樹林帯まで降りてきた

  
    下山後また青空が出て、またその後で雪が降り始めた

若者はその足で上高地へ下山。

テントに着いて昼夜兼用の食事つくり

左から登ればすぐ頂上だったようだが、目論見違いと、丹羽さんが足を引っ張ったので
遅れてしまい、山頂へ行けなくなってしまって、ゴメン。

13:30、1時間半で下りたわけ。

アイゼンを外してキャンプ地に戻る
下はまだ晴れているが、頂上はやっぱり雲の中。
最後の登り(懸垂下降の練習しているすぐ隣)で苦労したが、やっとテントに着

「お疲れさん」の声に迎えられ、ほっ。
今日はビールを買う元気なし
代わりに子ども達の父親が買いに行ってくれた。

夕食の用意(昼食兼夕食)にかかる。ステーキとサラダ

そのうち雪がちらちら。ぶるぶる。
「片付けて早くテントに入ろうよ」とせかす。

ビールは1本がやっと。それも多いのと少ないのとすり替えて。
寒い寒い。テントに入ると、ほっ。暖か〜い。

さあ、これから大人の時間。
ワインが出る。子供たちの父親も迎えて話が弾む。

父と子の楽しみ

あれから30分後ぐらいに出発。
ザイルをくっつけて「落ちる所まで落ちろ」といって滑り台をしたとか、
「さあ、これから登ろうか」と促すと「もう帰ろうか」とのことで帰ってきたとか。
お父さんは大変

父親は、寝ていた子の「お父さん」の呼び声で、子どものいるテントへお帰り。

後は3人で横になったり、寝そべったりしてリラックス。
ワインがどんどん入る。

ワインが空になり、ビールもなくなった所でお開き。
雪はまた止んで、星がキラキラ。

3日目  5月5日(日)

テント撤収して下山開始

5:30、起床。今朝は、パンとハムエッグ、昨夜の食べ過ぎ・飲みすぎで
すぐ朝食の準備ができず。

昨夜の水でコーヒーを作り、テルモスに入れて、残った分を飲む。
バターどっさりのハムエッグ(焦げ付かせないため)
8:00出発をめどにザックの整理・パッキング・テント撤収など。

親子のテントは見事にくぼみんでいた。
木のペグは置き捨て。トイレも埋め、皆で記念撮影。ゴミ拾いをしてさあ出発。

  
   今朝は快晴  昨日の雪は少しだけで積雪無し
    
   テント撤収の跡で記念撮影

昨日登った所は? どこ?と探すが、似たような沢ばかり。
今日も素晴らしい天気。後ろ髪を引かれる思いで振り返り、山を仰ぎ、ゆっくり下山。

  
    下るにつれだんだん変わっていく山容-1

  
   下るにつれだんだん変わっていく山容-2

  
   下るにつれだんだん変わっていく山容-3

雪道は石ゴロゴロの道に

雪はよく溶け、来た時真っ白だった雪道は岩ゴロゴロの道になり、
アイゼンがギイキイキイと嫌な音をきしませる。

アイゼンを外して、ザックの天辺に縛り付けた。

ファミリーの上の男の子は下りが得意そうで、滑りながらコケながら
どんどんついてくる。
下の子は、恐る恐るなのでずいぶんと離れてしまう。

  
   上高地を目指して下山

登山口近くの川で歯磨きと顔洗い。パッキングのし直し。

上高地のタクシー乗り場まで歩く。

周りは観光客でいっぱい。軽装の人ばかり。

振り仰ぐ穂高は惚れ惚れとする美しさ

河童橋の周りが一番人が多かった。

タクシーもあまりまたずに乗れ、駐車場からは、ファミリーの車に乗って一路帰途へ。
助手席で会計の申告を聞いて計算。
神坂のPAで、貰ったりあげたりして会計係の任務終了。

私だけ、多治見で降りて帰宅。

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