強風の八ツ 今までにない経験 |
赤岳〜横岳〜硫黄岳 |
(美濃戸〜行者小屋〜赤岳〜横岳〜硫黄岳〜赤岳鉱泉) |
不思議に横岳頂上だけは 風が収まっていた |
●場 所 | 長野県茅野市 | |||
●標高 | 赤岳 2899、2m 横岳 2829m 硫黄岳 2765m |
||||
●山行日 | 2002年7月13日〜14日 | ||||
●コース | 美濃戸〜南沢〜行者小屋〜中岳〜赤岳〜横岳 〜硫黄岳〜赤岳鉱泉〜美濃戸 |
||||
●多治見から 登山口まで |
多治見駅ー塩尻ー茅野=美濃戸口登山口 | ||||
●参加者 | 丹羽、川浦 | ||||
●コースタイム | 1日目 7月13日
|
夏、花が待っている。トレーニングもしたい。岩場もある。で、八ツに決める。 朝、林さんからTEL。名古屋は今雨が降っているので止めると。 天気予報をあれこれ調べる。今降っている雨は雷雨の雨。 雲は愛知・岐阜(南)・三重・静岡にかかっている。 長野は大丈夫だろうと判断して決行することにする。 「私は1人でもいきますが川浦さんはどうしますか?」と聞くと行くとの返事。 多治見7:32発のしなの1号。こんなにゆっくりでいけるなんて八ツはいいねえ。 茅野に近づくにつれ青空が見え始め、私の天気予報があたったと喜ぶ。 |
茅野発、10:20発。 11:00過ぎに美濃戸口着。さて、身支度をして出発しようかと思ったところへザーッと雨。 それも大降りで。しばらく軒先で雨宿りして小止みになったので 雨具の上下と傘をさして歩き出したのが11:30。 ミヤマオダマキがいっぱい。いつもの白いわからない花も (トリアシショウマかヤマブキショウマかチダケサシか?)。 イブキジャコウソウも今日は雨で洗われてきれいである。 ウツボグサもシモツケもいっぱい。ウメガサソウも固まって咲いている。 途中で雨具の上は暑くて脱ぎ、傘をさしたまま歩く。 美濃戸の「やまのこ」で大きなパラソルの下で雨を避けて休憩、12:20〜12:30。 |
少し登った所の分岐で南沢へ入る。 ミヤマオダマキは相変わらず続々と出てくるが、イチヤクソウはまだ姿なし。 沢に沿って雨の中ゆるい登り道を歩く。去年は1人だったが今年は2人。 毎年来られるなんて不思議な縁。雨の山行も心が落ち着いていいもんだね〜。 登りの大岩の下で休憩、13:10〜13:20。 14:00〜14:10、広場がなくて道に片寄せて休憩。 すれ違うときは傘を閉じたり開いたりして歩くほどの雨足。 シロバナノヘビイチゴをたくさん見かけた後、行者小屋に着、14:55。 雨は止んだようである。さあ、これからどうする? いつものメンバーだったら「止めよう」というような時刻と天候。 稜線に登ってしまえば風に吹かれることは分かっているし、 岩場の鎖場だから危険いっぱいだし・・・・。 だが、彼女は「こんな所で泊まってもどうしようもない・・・」と強気で、 迷っている私の背中を押すように言う。 |
文三郎尾根、地藏尾根は少々時間は短いので使おうかどうしようか迷ったが、 今まで通ったことのあるルートで、一番危険の少ない、 花の多い中岳経由で行くことにする。15:10発。 ここから2時間半で「赤岳展望荘」着の予定。 下のほうはオサバグサがいっぱい。少し終わりかけで。 上のほうになるとキバナシャクナゲやハクサンシャクナゲがいっぱい咲いていた。 ガスの中でふわりとやさしい色合いがそれ。いつものお花畑はまだ咲きそろっていない。 稜線は風が強いだろうと、阿弥陀・中岳の鞍部のすぐ下で休憩、16:05〜16:10。 稜線もそれ程の風ではなく、いつもの場所でコマクサを見ながらのアップダウン。 |
文三郎尾根との合流点から風は強くなりふきっさらし状態。さえぎるものもない。 ジグザグに進むが、右へ進むときと左へ進むときとでは 風が正面からと背面とに変わる。 赤岳の頂上直下の岩場まではガスと風だけだったが、 その岩場を登りはじめると雨も降ってきて、雨・風・ガスの3拍子。 岩に雨が流れ、岩に手をつくと伝って袖口からツーっと入ってくる。 勿論手袋はずぶずぶ。ぎゅっと手を握ってしぼりながら登る。 難しい岩ではないが雨具のフードが目深に落ちてくるのか、 前方を見極めにくくなっていた川浦さん、2回ほどあれ?後ろからなかなかこないな? と思って引き返してみると、違った方向へ行きかけていて、 「こっちだよ〜」と声をかけ軌道修正をする。 |
17:30、赤岳の頂上に着いたが風が強く記念写真どころではない。 稜線へ出ると、今までの風よりももっともっと強い風が吹いていて、 狭い稜線から転がり落ちないようにと必死で足を踏ん張る。 「赤岳頂上小屋」でもいいが、計画通り予約してある「展望荘」まで行こうと 弱気を殺してそこを通過する。 今度は下り。正面からの強風にたじたじ 。横向きになって風を避け、一歩一歩必死で足を踏ん張って岩の斜面を下る。 ふらついたときのストックの有用性が実感できた。 18:05、やっと「展望荘」へ着いた。 もう先客は夕飯の真っ最中。 ずぶぬれの服か・・・と思っていた所が、雨具の中はそれ程でもなく 着替えをしないまま、テーブルにつく。ゴアのおかげか。 |
水が天水しかないためか、食器は白色トレイの使い捨て。 下の方にちょっこっと残っているご飯とぬるいお味噌汁と 残っているおかず(バイキング形式)を日本酒で頂く。(ビールの気分ではない) 階段を降りた下が今日の寝場所。 ストーブがついていて暖かい。早速濡れた物を乾かす。 川浦さんは慣れた手付きで靴に新聞紙を入れている 。私も新聞紙を貰う。 食べたあとは寝るだけ。着替えをしてさっぱりすると暖かくて快適。 前日は遅くまで仕事をしていたので睡眠不足が解消できてよかった。 夜中も強風が吹きまくっているな〜と思いながら寝ていた。 |
朝、トイレへ行こうと玄関を開けると(トイレは外、超簡易水洗トイレ)、 昨日よりもっと強い、息が止まるほどの風が吹きまくっている。 うへ〜とふらつきながら駆け込む。トイレに接続している棟は個室客らしい。 「展望荘」は稜線のまん上に立っていて、物陰なんてどこにもなし。 「なんでこんな風の通り道に建てたのよ〜」とうらみたくなるほど。 でも、幸い、雨ではなくガスの小さな雨粒だけだったのでさほど濡れずにすんだ。 朝食を食べ(朝もバイキング、こごみがおいしかった) 後ろへ行くも前へ行くも覚悟がいるので、 ほかのお客と「どちらへ下りますか?」なんて情報を交換する。 |
一番の近道は地蔵尾根から下ること。但し鎖場がある。 計画は横岳を通って硫黄を通って赤岳鉱泉へ下りることにしてある。 横岳は岩場の稜線。梯子も鎖場も何回も現れる。どちらも安全とはいえない。 どうするか迷いながら、地藏尾根の分岐まで行って考えることにして出発。6:20。 覚悟はしていたが、烈風と言ってもいいほどの風が吹く中、 正面から吹いてくる風のため前へ進めないで、その場足踏み状態になってしまう。 「ええい。こんなことで負けておれない!」と思い、 1・2、1・2と自分自身に掛け声をかけて少しでも前へ前へと足を出していく。 風は常時強いというわけではなく、岩陰にはいると弱くなり 息もつけるのでそんな所でしばらく息を整えてからまた風の中に入っていく・・・ また、烈風にさらされる・・と繰り返しながら地蔵尾根の分岐まできた。 さあ、どうする・・・。下から登ってきた人は、ガスの中から声が先に現れた。 川浦さんはここでも「だいぶ風になれたね」と計画通り前進したい口ぶり。 強気だねえ・・・。 その声に背中を押され、横岳へ行くことに決める。 彼らは「前進するのですか・・・」と驚いた様子。 7:05、休憩。岩陰で。 |
川浦さんはこのコース初めて。私は数回の経験。 何処にどんな岩場があって何処に鎖場があって・・・と 頭の中でこれからのコースが予想できる。 稜線の右側は、風も弱くるんるん。左側に出るとビュービュー。 ストックを「ここへ突こう」と思って出しても、風に吹かれて思った所に突けない。 何度も、るんるんとビュービューを繰り返すうちに風に慣れて、 しっかり足元を見て注意深く足を出せばいいこと。 岩場や鎖場でも三点確保でしっかり握っていればいいこと・・・がわかってきて、 周りのガスの中に咲く花を見る余裕も出てきた。 八ヶ岳の花の見ごろは7月中旬までとか。 いつものポピュラーな高山植物はほとんど咲いている。 横岳頂上手前に右側に下る分岐。風が弱そうだなあ・・・と心が動き誘われたが ここまでくれば前進あるのみだわなあ・・・と考え見送る。 7:30、横岳頂上着。.意外なことにここは風が吹いていなくて 記念写真が撮れるほど。 お互いに写真を撮り合う。 ここから鎖場・梯子で「かにの横ばい」があるところ。気をつけて下る。 ここから硫黄まではコマクサの群生地。 しかし、風を避ける岩場もなく吹きっさらしの登りがずーっと続く、 強風で有名な登りが待ってる。 |
私は自分で強風1〜5までの段階をつけた。 今は強風3とか、前進できなかった稜線の風を強風5などとして まだまだ5よりは弱い・・・なんて考えながら歩いて気を紛らせた。 私のザックカバーがめくれて、はたはたとなびく。 直してもらっても同じこと。しかたなく手で押さえて歩く 雨具のフードもめくれてしまうので止め紐をやはり手に持ってひたすら下を向いて登る。 時々ケルンがあるので、その陰で息を整え、 また次のケルンを目指して歩き出す・・・を繰り返して、 とうとう硫黄の頂上に着いた!!。8:40〜8:45。 頂上の標識の陰で風を避けて休んでいると、 下から無防備な格好をした団体がやってきた。 半袖、雨具なしの人もいる。 ええーっ、下はそんなに無風状態なのか!!と驚きあきれた。
|
さあ、下山。な〜るほど。 一歩稜線から外れると、さっきまで烈風にさらされていたことが嘘のように風がない〜〜〜。 花のない登山道を下って赤岳鉱泉に9:45着。 稜線を歩かずに行者小屋からやってくる人が多かった。 そうだよね。普通はこんな日には稜線は歩かないよね〜と思いながら、 歯磨きをしたり顔を洗ったりして人心地になった。10:25発。 ここからは北沢のたらたら道。このルートはずいぶん久しぶり。 記憶がまだらなので新しい道のように思え新鮮。やはりヤマオダマキが多い。 登山口の堰堤、11:20〜11:25。 そこから林道を延々歩く。 クリンソウが溝に咲いていた。こんなところに?。 イチヤクソウもここでやっと花が開いているのにお目にかかった。 こんなに遠かったか〜と思う頃やっと美濃戸へ。12:00〜12:10。 南沢は林道歩きがないぶん、山の雰囲気が味わえていいが、 こちらの北沢は林道が多くてつまらない。 「やまのこ」で無料ビール券を使う。 以前高見石小屋から送ってきたハガキで。 |
またそこから林道を歩いて美濃戸口へ。 帰りはショートカットで山道を下る。 このおかげかバスの発車まで12分という滑り込み状態で到着。 12:55着。 急いで着替えとトイレを済ましてバスに乗る。これでほっと一安心。13:07発。 満員のバスの中、ビールを飲みながら行動食をおなかに入れる。 川浦さんがストックを忘れたことに気づいて、案内所へその旨を伝えた所、まだ帰宅しないうちに自宅に連絡が入ったと後から聞き、ちゃんとストックも送られてきたそうである。よかったよかった。 |
強風に吹かれてやっと下山 下は別世界だった |
|