モンブラン(4810m)未踏の記
      2回目のアルプス
 
                      (シャモニーを基点に)
                             1日目〜3日目


1日目  出国〜シャモニーへ
2日目

モンブラン
晴れていたのは到着した日だけ

3日目

ヴァレ・ブランシュ氷河から
トレーニングに出かける

4日目

テート・ルース小屋の前で
ここから下山と決まった

5日目

モンブランの代わりに
グラン・モンテからの登攀体験

6日目

シオンの古城までハイキング
7日目

フリータイムでお花見ハイクへ
8日目  出国
これから天候のいい週が始まると・・・
9日目   帰国
●場 所 フランス シャモニー
●標高 エギュイユ・ド・ミディ    3842m
テートルースの小屋    3167m
グラン・モンテ        3300m
●山行日 2002年8月1日〜9日
●コース シャモニーを基地にあちこちへ
●多治見から
 登山口まで
多治見駅ー関西空港≠ジュネーブ空港=シャモニー
※ー鉄道 =自動車 ・・・徒歩 ⇒バス ≠飛行機
●参加者 丹羽、他参加者9人、添乗員兼ガイド1人
●コース
   タイム
1日目 8月1日 
シャモニーへ
多治見駅
関西空港
ジュネーブ
シャモニー
6:20
9:34 〜11:50
現地時間20:40
現地時間22:00頃
2日目 8月2日 
高度順応ハイキング
午前中シャモニーの町をぶらぶら散策
午後、ロープウエーでブレヴァン山頂へ
帰りは中間駅までハイキング
3日目 8月3日 
氷河トレーニング
ホテル発 7:45
エギュイユ・ド・ミディ山頂駅からガイドとアンザイレンでヴァレ・ブランシュ氷河トレーニングへ    9:00〜13:30頃 
4日目 8月4日 
グーテの小屋まで行くはずが・・・

ホテル発
ニー・デーグル
テート・ルース小屋
ホテルへ
8:40
10:05発
12:55〜13:20

5日目 8月5日 
モンブラン未登頂の代わりに
グラン・モンテで岩・氷・雪体験
ホテル発
アルジャンチエール山稜へ
ホテルへ
8:00
9:25〜15:00頃まで

6日目 8月6日 
スイスまで古城ハイキングに
ホテル発
シャモニー駅発
シオン駅着
8:00頃
9:39
11:45
 古い城と古い町の散策
シオン駅発
ホテルへ
14:59

7日目 8月7日  
やっとお花見ハイキングへ
 
ホテル発
8:30頃
バスでコル・ド・モンテへ
そこからハイキング〜シャラミオン駅まで   16:10発
バスでシャモニーへ  
8日目 8月8日  
帰国の途へ
ホテル発
ジュネーブ空港発

7:30頃
11:00

9日目 8月9日 
帰国
関空着 8:10


1日目 8月1日

ネパール行きのとき貰った大きなダッフルバッグに、ピッケル・アイゼン・ヘルメット・ストックはもちろん軽登山靴にタウンシューズにいつもの山行に持っていくもろもろのものが全部入ってしまった。

おかげで重い重い。託送を頼んでいつものザックひとつで出かけることができた。ありがたい制度。
関空でうっかり入れておいた小型ナイフと小型はさみは没収
帰国時に返してもらえないかといってみたがNO!。非常用にいつも持ち歩いていたので、
危険物の認識がなかった〜。

ヨーロッパ周りのAコース参加は5人。そのうちエアフランスで行くのが私を含めて3人。
ルフトハンザで行くのが2人。シャモニーで後からくるアジア周りのBコース4人と合流の予定。
ツアーリーダーはBコースに付き添っているので心細い。

  
    関空で   これから搭乗するエアフランス

12:05、離陸。機内は本物のパヒュームの匂いが漂う。14:00、ロシア領土へ入る。

エアフランスのランチを期待していたが、ベリグッド。

1人用のテレビを見たり、支給のアイマスクをしてうつらうつらしたりして過す。
窓を閉めて暗くしてしまうと頭が夜と感じて自然と眠くなる。

テレビには常時今どのあたりを飛んでいるのか地図が出るし、現地時刻、気温、
あと何時間かかるかなども画面に出てくる。

23:00、ディナー。これもベリグッド。24:20に、現地時間に時計あわせ。=17:20に修正

パリでは曇り、23℃の予報。シャルルドゴール空港の乗換えが煩雑だと説明書に書いてあったので
心配していた。が、同じFホールだったのでよかった〜。

  
    パリ シャルル・ドゴール空港

23ゲートを目指して歩いていく。分かりやすく案内がされているので迷うこともなく、
ボディーチェックもなくパスポートも見せることなく即時に通過。F23は場末の感じで隅のほうで小さい。

    
  シャトルバスに乗ってエアフランス1142へ      横断歩道は空港内でも道路でも、よく守られていた

19:30発のAF1142便。先ほどよりは小型。

  
  これから搭乗するエアフランス1142

ディナーの次だから朝食になるのか?。外は20:00過ぎても明るいので夜食か?。????だった。
フランスパンのチーズサンドイッチ1個が配られた。食欲がなくホテルまで持っていって、
翌日食べた。
トマトジュースをもらったがそのせいか体が痒くなり、以後気をつけようと思った。

ジュネーヴに20:40着。面倒な手続きなしで即OK

  
    ジュネーヴ空港  載ってきたエアフランス

バッグを持ってロビーに出ると「丹羽さん」と声をかけられる。

アルパインの代わりにお出迎えくださった今(こん)ゆたかさん。

  
  ジュネーブ空港出口で  お迎えの車に乗ってシャモニーへ

彼は郵船トラベルに勤めシャモニー市民でスイス人の奥さんがいて
北海道出身、ガイド資格を得るために努力中・・・など
タクシーの中で聞いてしまう。

ホテルまで我々を送り届けるのが役目らしい。
明日シャモニーに着くツアーリーダーの加藤さんと合流するまで、いろいろ親切に教えてくれた。

『朝食は8時頃が空いている。両替はバルマー広場のサングラスショップの隣りのところが
手数料が安くていい。
自動両替機もあって24h営業している。両替は1回ごとに手数料が必要なのでまとめてするとよい。
スネルスポーツには神田さんという日本人がいる。
日本料理店〈さつき〉は緊急連絡先。中華料理店では日本語が通じる。
レストランでのチップはサービス込みなので必要なし。
ベッドメイキングには1〜2ユーロ置くといい。
シャモニーの観光局のベルナデットさんは4:45〜日本語で案内してくれる。
シャモニーの水は軟水なので飲んでも大丈夫・・・・・・』など。

あたりはやっと暗くなってきた。それで21:30。「ほら氷河が見えるでしょう」といわれ、
覗くと白い雪が見えた。国境はフリーパスで通過。
空港から約1時間後、ホテル・プリウルに到着。やっと夜になっていた。これで約10時。

  
 ホテル・プリウル602号室から見上げるモンブラン  快晴

受付をしてもらう。このホテルは木のやさしい感じがうまく使われている3ツ星ホテル。
エレベーターの扉も花の絵が描いてある木製。

貴重品預かりの金庫の空け方・閉め方まで実演してもらい、シャモニーの日本語地図をもらってお別れ。
もう遅いので、シャワーを浴び、簡単に洗濯をしてからベッドへ。
タオル掛けが常時暖かくて乾燥機の代わりになる。

2日目 8月2日

午前中シャモニーの町をぶらぶら散策
午後、ロープウエーでブレヴァン山頂へ
帰りは中間駅までハイキング

8:00に朝食の約束なのでゆっくり起きる。
窓を開けると目の前にモンブラン!!!

初対面のルフトハンザ組の田中・池田さんも合わせて5人そろって食堂へ。

  
   ホテルの食堂

セルフサービスで、ゆで卵・ハム各種(油の少ないハムがおいしい)・クロワッサン・チョコレートパン・
フランスパン・ジャム類・フルーツの籠・牛乳・りんごジュース・オレンジジュース・チーズ各種・
ヨーグルト各種・ミネラルウオーターなど好みのものを取ってテーブルへ着くと、
カフェ?ティー?ショコラ?と聞いてくるメイドに好きなものを頼む。
ハムがおいしかった。
これがずっと毎日続く


「南回り」が来るまでシャモニーの町を見て回ることにする。
  
  
   シャモニーの街並み 今日は、モンブランがよく見える
    南回りのグループがくるのを待つ間町を散策


昨日もらった日本語入りの地図を持って町へ下りる。
すぐの曲がり角からモンブランが見える。

  
   ウィンパーのお墓           

  

 墓地から見上げるモンブランとは反対側の山並み 中央左が、ブレヴァン
  午後、ゴンドラに乗って山頂へ登った

  
   果物屋さん  ばら売りで並べてある

今日明日と晴れていてこの景色が当たり前と思い込んだが、
その後雨続きとなった。


  
  中心街  この川がアルヴ川  白濁している

町のあちこちに花が飾ってあり被写体として素晴らしい。

   
  シャモニーの町は、いたるところに花が飾られている

カフェとして通りにテーブルを出している店もあちこちある。

大きな犬を連れている人が多い。どれもみな大人しいので安心だが。

バルマ広場からのモンブランも絵になる。
バルマーとソシュールの2人が始めてモンブランへ登った記念像で、
モンブランを指差している。

  
   シャモニーの街の中心
    ソシュールとバルマの2人がモンブランを指さしている

午後からハイキング。相部屋の彼女が帰ってきたので挨拶をする。
13:10にはロビーでミーティングと聞き早速下へ下りる。

ツアーリーダーの加藤さんは小柄で華奢な体つき。
それでも八ヶ岳でアイスクライミングのガイドをしているという。へ〜え。

ロープウエー代などとして一人200ユーロ預かります・・・とのこと。
まだ私は両替をしていないので後回しにしてもらう。
 
みんなそろった所で(高所順応にならない・・・と加藤さんは言うが)
ブレヴァンへ出かけることになった。

暑くて日陰が恋しいほどの坂道を上がってチケット売り場へ。

   
    ブレヴァン行きのチケット売り場     チケット売り場からモンブラン山群を見上げる

ロープウエーに乗って中間駅へ。

  
  ブレヴァンへの中間駅で  シャモニー針峰群を望む

乗り継いで終点まで。少し上がったところが展望台。

このいい天気は今日で終わりだった

  
   ブレヴァン山頂の展望台で

このままロープウエーで帰るには惜しい・・・といって3時間のハイキングは
明日に差し支えるかも・・・ということで、頂上駅から中間駅まで
下る
ことになった。

    
   頂上駅から中間駅まで降りてきた        ヒメシャジン やや盛りを過ぎていた

途中の中間駅のレストランで休憩した時には、暑くて
太陽を背中にして座る。
また、ロープウエーに乗ってシャモニーへ。
インフォーメーションに寄ったりスネルスポーツへ寄ったりした後、明日の行動食を買うことになり
スーパーを教えてもらう。
手提げ籠を持って自由に入れてレジで清算という日本と同じやり方。果物や野菜が
1個1個買えるのが魅力


夕食はムール貝がおいしいというレストランへ行くことに決まる。
ホテルへ帰って夕食までの間に入浴を済ませる。

加藤さんのお奨めのムール貝。あまり乗り気ではなかったが、来てみてびっくり。
顔を洗えるほどの洗面器大の器に山盛り
入ってきた。
隅のほうにはフライドポテトがこれまたどっさり。(食べ切れなかった)
生クリームか?味もまたいい。小
さな貝の中身を一心に取り出して、殻を山ほど積んで、ビールも飲んで15ユーロ。
今回の1番のお値打ち。
2時間ほどかかってデザートのアイスクリームまで食べ、十二分に満足してホテルへ帰る。

明日の用意をして(冬山装備、アイゼン・ピッケル・ハーネスなど)就寝。

3日目 8月3日

エギュイユ・ド・ミディ山頂駅から
ガイドとアンザイレンでヴァレ・ブランシュ氷河トレーニングへ

6:00前に起床。雨具のズボンもスパッツも冬用登山靴も
全て身に着けてロビーに下りる。天気予報は雨・風だという。
7時前に朝食。菓子のような高カロリーの行動食をもらって7:45ガイドが迎えに来て出発。

エギーユ・ド・ミディへ登るロープウエー駅まで歩く。同じような格好をした人がたくさん集まっているし、
まったくの軽装の人も並んでいる。8:00乗車。

  
   モンブラン登頂のためのトレーニングに出かける
    エギュイユ・ド・ミディへのゴンドラ入口
    本来は、エギュイユ・ド・ミディからゴンドラに乗ってイタリア領へ行き、
    そこから氷河を横断して帰ってくるはずだったが、強風のため運行中止

途中で1度乗り換えたが、ゴンドラに乗ってあっという間に3842mへ。
8:30頂上駅に着。

  
  
    エギュイユ・ド・ミディへ上がるゴンドラ


風でゴンドラが揺れるほど。下りたらそこは雪の世界。
トンネルに荷物を置いて展望台に上がる。

    
   エギュイユ・ド・ミディの頂上
    よくもこんな高さに、ロープウエー駅やレストランやトイレを作ったもの!!


  
   エギュイユ・ド・ミディの展望台からシャモニの町を見下ろす

    
   エギュイユ・ド・ミディの展望台から見上げるシャモニ針峰群   展望台は風が強く寒い


風は強いが晴れている。この強風の中、稜線を歩くのか?と
胸がどきどきする。「何処から降りるのですか?」と尋ねると、
指差された方は後ろ側。

  
  これから降りていくトレースが左の方へと見えている  以後、カメラを取り出す余裕は無し
  小さな点が歩いている人

階段を下りてトンネルの中でアイゼンとハーネスとサングラスを着ける。
OK?といってガイドにハーネスをチェックをしてもらう。

さあ、いよいよ。トンネルの中を歩いて柵のある出口で
ザイルを結んでもらう。
加藤さんが端、その次が田中さん、次が私、最後がガイドのデイビッド。

またぎにくい高めの柵を乗り越えいよいよ雪の世界へ。9:00ごろ発。

風が強いが我慢できないほどではない。
稜線の踏み跡をたどって(昨日加藤さんは"下を見ると
足がすくむ"といっていたので下を見ないことにして
雪面ばかりしっかり見て)歩いた。
斜度はそれ程ではない。シャモニーまで見えるそうだ。

ザイルを緩ませないよう適度な張りを持ったまま下る。
下りはこの順。

クレバスがあるところではザイルを長く伸ばして
確保の体制に入ってからOKの合図が出る。
氷河の平らな所に降りると固く締まって沈まないし楽々で歩ける。
ところどころ風の道があるのかふらつく所もあるが楽しんで歩ける。
こんなところにテントを張っているパーティーもあって驚く。

どんどん進むと前方に雪と岩のピークが見える。
まさかあそこへ行くわけではないだろう??と思ったほどだったが
どんどん前のパーティーは進んでいく。

左は斜度のある雪面。加藤さんは「落ちても死にませんから
大丈夫」という。が、落ちたらガイド1人(加藤さんを入れれば2人)で
ストップさせられるのか?
何処までも落ちていってしまいずっと先の〈鍋の底〉まで行かないと止まらないのではないか?
と不安になる。

とにかく2m四方のみじっと見て一歩一歩足を出すしかないと覚悟を決める。
途中、クレバスが一カ所あって緊張したが何とかピークまでたどり着けた
やっと飲んだり食べたりしてもいいとお許しが出たので水とバナナをおなかに入れる。
狭いピークだが腰がおろせる。カメラも取り出し周りの山を写す。

  
   エギュイユ・ド・ミディの展望台を出発してからやっと初めてで最後の休憩が取れた
    
コル・デュ・プラン方面を望む

  
    第3パーティーは、向こう側の峰上
      帰りは、彼らの板ピークからその先の岩稜地帯を越えて、雪と氷の急さy面を下った

さて、下り。さっきの道なら嫌だなあと思っていると、後ろの
第3パーティーが休んでいるもうひとつのピークへ行くようである。

彼らのいたところまでは雪面。その先は雪のついていない岩稜
アイゼンのツメの軋る音も気にならないほど緊張している。

「安定した所に上がったら次の人を引っ張る!!」と加藤さんから
声がかかる。

  
  今回のガイドのリーダー ディビッド

少し上がって今度は横へ岩稜のトラバース。そこまではまあよかった。
そこからが緊張の連続。

手がかり足がかりのないつるつるの岩(雪が凍って張り付いている)を
下りるという。ええっ??!!どうやって??!!

後ろ向きになってアイゼンの前爪をけりこんで、ピッケルの
ピックを突きたてて、岩にくっつかないで・・・
」と解説はしてくれるが
そんなことしたことないよう〜〜。

岩稜の次は急斜面の下り 加藤さんは「55度」と言ったが、それよりずっと急に感じた。

前のパーティーが下りているのを見て覚悟を決める。自分の番になった。

こんなときのために前爪はあるんだと思い、蹴りこんでみるがずぶりと刺さりはしない

かろうじて引っかかっているといった具合。ピックもほんの少し刺さるだけで不安定この上ないが、
何とかトラバースできる所まで下りれた!!!

先に下りたパーティーはまたこの下の雪面を下るらしい。
下ってどこよ〜〜〜
と思えるほどずっとずっと先。

加藤さんから「もっと前爪を蹴りこんで」と檄が飛ぶ。頭では分かった。

今度は我々のパーティー。まず加藤さん、次に田中さん、次いで私。
デイビッドはちゃんと確保しているんだろうかなどと考える。

1パーティーが少し下った後、垂れているザイルに「つかまってもいい」と言われ
拠りどころができたと安心する。
左手でザイルをつかみ、右手でピックを突き刺し、前爪を強く蹴りこんで一歩一歩下り始める。
足元を見るために腰を持ち上げ、1(ピック)2・3(アイゼンの爪)のリズムで下りる。

下のほうで話し声が聞こえてきた、あそこまで行けばもう下らなくてもいいんだと喜んでいたらまだまだ、
先があった。先に下り始めた1パーティーが途中で待っていたようである。

「調子がいいね。どこでトレーニングしたの」と声がかかるが返事をする余裕がなく、ただ下ることだけを
考え1、2・3のリズムに専念する。

やっと「前を向いて歩いてもいいよ」と声がかかり、向きを替える。あと少し。でもクレバスがある。
加藤さんが気をつけてそれを避け、安全地帯に導いてくれた。

ふと上を振り仰ぐと、後の2パーティーがまだ下りている最中だった。ガイドも加藤さんも
のんびりしているので、ここで少し休憩ができた。

  
  岩稜の次は急斜面の下り
   加藤さんは「55°」と言っていたがそれよりずっと急に感じた
   正面を抜いては降りられず、後ろ向きで前爪を蹴り込んで、
   ピッケルのピックを雪面に差し込んで降りる
   行けども行けどもゴールにならなかった


待っている間にガスが出てきた。全員を待たずに出発。エギーユ・ド・ミディまでの登りが待っている。
だんだんミディの頂上が見えなくなってきてホワイトアウト状態になってきた。

こんな平らな所やばい・・・と思ったがガイドつきだから大丈夫と言い聞かせる。

そのうち雷の音も聞こえ始めた。雪が溶け始め、行きには潜らなかった足元がずぶっと潜り始め
歩きにくくて仕方がない。

これで体力が消耗したのか、デイビッドがスピードを速めたのか、先ほどのトレーニングで体力を
使ってしまったのか、息苦しくて仕方がなくなってきた。

息を吸おうにも肺に入ってこない。「高地なのでたくさん吐けば空気が入る」といわれハーハー2回、
ス−1回と決めたら肺に入ってきて楽になった。

ますますホワイトアウトは強くなり、稜線もミディの頂上も何にも見えなくなった。雷もなっている。
早く安全な所へ行かなくては・・・と気ばかり焦るが足が重い。

立ち止まる事はしないが一歩一歩が遅くなった。
今まで右手にザイルを巻いていたデイビッドが肩へかけた。

行きに通ったクレバスを過ぎれば後は稜線に出て左へ登っていけばトンネル・・・と分かっているが、
先が見えないのであそこまで行けばいいと自分に言い聞かせられないのがかえって疲れを
助長させたのかもしれない。ここにきて高度障害が出てきたのかも。そういえば吐き気もしてきた。

そんな私をぐいぐいと引っ張ってくれるデイビッド。「アレー!!アレー!!」というのが『早く早く』の
意味だとは分かっている。
加藤さんも「歩いて!!歩いて!!、今が一番危険な所ですよ!!」というが
足が思うように出せない。

そんな時デイビッドが急にばたっと前に倒れた
そして私に向かって「ビー・ケアフル?」と言ったが、その時はなぜそんなことを??と不思議に思っただけだった。
(この雷は、エギイユ・ド・ミディの天辺に落ち、鉄の手すりにもビビビンと伝わり、
彼のピッケルにも伝わったので倒れた・・・と後で分かった。我々は無傷だったが)

彼はまた起き上がってぐいぐい引っ張り上げてくれてやっとのことで柵に着いた!!!!!!!!。
13:30頃。

ようやくのことで柵をまたいで安全地帯へ。ヒーヒー、ハーハーと息を整えるのがやっと
そして、「メルシー・ボウクウー」といってデイビットに握手とハグをした。

  
    ヒ―ヒーとあえいでやっと着いたエギュー・ド・ミディの駅構内
    我々のパーティーが一番
    次いで川口・越智パーティーが到着
    彼らもしばらく座り込んでいた


田中さんも息絶え絶えのようで、「丹羽さん強いですね」とお褒めの言葉。
「違うんですよ引っ張ってもらえたから歩けたんですよ」と答える。

トンネルの中を通ってロープウエーの待合室へ。あまりの緊張感と疲れで食欲もなし。
トイレへ行く気もなし

ベンチで座っていると後続の川口・越智パーティーが帰ってきた。
越智さんもしばらく床にへたり込んでいた。

そのうち3番目のパーティーも帰ってきて、そろった所でロープウエーに乗車。

ホテルへ帰ってから入浴。今日はバスタブにお湯を入れて体を洗う。洗濯も少し。
ベランダにロープを張り濡れたものや洗濯干しをする。天気がいいのでよく乾きそう。

昼食としてバナナ・ミネラルウオーター・ジュース・行動食のマドレーヌを食べる。

明日用のミネラルウオーターを買いにスーパーへ。

明日に備えて、加藤さんから装備チェックに集まるようにとのことで700号室へ。

「いらないものは置いておき100gでも軽くすること」との仰せ。
冬用のヤッケもズボンも置いていき雨具で代用することにする。
テルモスもやめる。ゆっくり飲めそうにないことは今日で分かった。行動食もできるだけ少しにする。
「女性は化粧品を持ちすぎる」と言われるまでもなく日焼け止めのみ1本とする。
アイゼンの袋も置いておく。これでほとんどがら空き状態。


次のページへ